BBCがアガサ・クリスティのミステリー小説をドラマ化した2作目「検察側の証人」。イギリスでは2016年のボクシングデーに放映されました。最近引っ越しを機にひかりTVにかえ、AXNミステリーで字幕版をやっていたので見ることができました。トビー・ジョーンズやアンドレア・ライズボローなど日本ではさほど有名ではないけれど、イギリス人らしい味のある俳優陣が魅力。予想外の結末に軽いショック状態から抜けられなかった。最後の最後でガツンとやられました。ミステリーのドキドキ感とサラ・フェルプスのドラマ性を堪能できるドラマです。


あらすじと登場人物 ややネタバレ

舞台は1923年のロンドン。大富豪のフレンチ夫人(キム・キャトラル)は年上の夫を亡くし、青年レナードと出会い関係を持つようになる。ある晩メイドのジャネットは夫人が自宅で頭部を殴られ死んでいるのを発見する。相続絡みでレナードに嫉妬したジャネットは事件の夜レナードを目撃したと証言し、妻ロメインも証言を覆すようになる。弁護士メイヒューはロメインの素性を握り、嘘の証言とレナードの無実を何とか立証するよう翻弄する。そして、その結末からドラマが。。。


Kim Cattrall, Monica Dolan, Toby Jones, Andrea Riseborough, and Billy Howle in The Witness for the Prosecution (2016)

左からフレンチ夫人(キム・キャトラル)
ロメイン(アンドレア・ライズボロー)レナードの妻(籍は入れていない)踊り子として生計を立てている。レナードが起訴され、夫の情事に腹を立て証言を覆す。
中央が老練の弁護士メイヒュー(トビー・ジョーンズ)息子を戦争で亡くし、妻と二人で暮らす。喘息持ち。
被告人レナード(ビリー・ハウル)
メイドのジャネット(モニカ・ドラン)フレンチ夫人を長い間世話しており、夫人の全てを知る人。事件当日レナードを目撃したと証言。

感想 悲劇はミステリーの原点 トビー・ジョーンズ最高

第一印象は「無実はさいなむ」と比べてしまったけれど、登場人物が少ないことで複雑さがなく、誰が犯人かを推理する時間を味わえた(結局オチはそれじゃなかったんだけど。)ストーリーとしては比較的わかりやすくてミステリーの王道な感じ。兎に角トビー・ジョーンズ扮するメイヒューのキャラの濃さとロメインのミステリアスさのインパクトが大きかった。

アンドレア・ライズボローはマドンナが監督した「W・E」でシンプソン夫人を演じていたのが印象的だったけど、「ノクターナル・アニマルズ」やら、役でガラッと印象が変わってしまう独特な存在感がある。

トビー・ジョーンズは今年英国アカデミー賞テレビコメディ部門で男優賞に選ばれた実力個性派俳優。戦争で子供を亡くし、自らも後遺症を抱えながら(やたらと咳き込むシーンがリアル)裁判を勝訴に導き、最後に南仏のリゾートを楽しむ金持ち弁護士になっていく変貌ぶりが凄かった。

でも一番の見どころは前情報にも書かれていた最後の大どんでん返し。それがめちゃくちゃ深かったです。切なすぎる。誰しもが善と悪の両方を持っていることを言いたかったのか?ロメインの「愛なんてないのよ。」っていう台詞が物語って、戦争を生き抜いてきた時代の人の声なのか。

法廷ドラマと言われるけれど、実際法廷でのシーンはさほど白熱するようなドキドキ感がなかったのが残念。やっぱり裁判が終わってからの展開が強烈だったからでしょう。
ペルシャ猫の使い方も薄ら怖い感一杯の演出でした。

★★★★☆

トリビア

次作は「ABC殺人事件」。5月にキャストが発表され、ポアロをジョン・マルコビッチが演じる模様。
脚本、プロデュースは引き続きサラ・フェルプス。楽しみです。

無実はさいなむ 記事→BBC Ordeal by Innocence

スタッフ キャスト

BBC 2016年12月放映
原作:アガサ・クリスティ
監督:ジュリアン・ジャロルド
脚本:サラ・フェルプス
キャスト:トビー・ジョーンズ アンドレア・ライズボロー デヴィッド・ヘイグ モニカ・ドラン